建設業の人手不足が一段と深刻化している問題について。要因と今後の展望について解説!
業界関係者の誰に取材しても「人が足りない」との声ばかり—人手不足の要因と今後の展望
日本の建設業界は現在、深刻な人手不足に直面している。国土交通省のデータによると、建設業の就業者数は年々減少しており、特に技能労働者の確保が急務となっている。業界関係者からも「人が足りない」という声が頻繁に聞かれ、この状況は業界全体で共通の課題として認識されている。では、なぜこれほどまでに人手不足が深刻化しているのか。その要因と、今後の展望について考察します。
1. 人手不足の要因:給与形態と労働環境の問題
建設業界における人手不足の最大の要因として、給与形態と労働環境の不安定さが挙げられる。技能労働者の多くは「日給月給制」や「手間請負」といった、仕事量に応じて賃金が変動する給与体系で働いており、この不安定な収入が若者を建設業界から遠ざけている。また、建設業界の重層下請け構造により、職人として働く多くの労働者が正社員として雇用されず、結果的に安定した収入や福利厚生を享受できない状況が続いている。
特に若者にとって、将来の生活基盤を整えるためには安定した収入が必要である。しかし、建設業界では仕事量によって給与が変動するため、結婚や子育て、住宅ローンの支払いなど、長期的な生活設計が立てづらい。このような労働環境では、若い世代が建設業に魅力を感じることは難しく、結果として若者の職人離れが進んでいる。
2. 建設業の歴史的背景と労働慣行
現在の建設業における労働慣行は、1960年代の高度経済成長期に遡る。戦後の急速な復興と経済発展に伴い、建設業界では大量の労働力が必要とされた。その際、仕事量に応じて柔軟に労働力を確保できる「手間請負」や「日給月給制」が定着し、これが現在まで続いている。このシステムにより、ゼネコンや大手建設会社は必要な労働力を外部から調達し、直接雇用の責任を回避してきた。
しかし、この仕組みが長期的に見て技能労働者の育成を阻害し、業界全体で人材育成の機能が低下してしまった。特に若い労働者を育てる環境が整っていないため、職人としてのスキルを身につける機会が限られており、それがさらに若者の職人離れを加速させている。
3.内装工事や設備工事で顕著な人手不足
特に建築業界では、内装工事や設備工事などの分野で人手不足が顕著である。
これらの分野は、機械化が難しく、ほぼ人手で行われるため、熟練した職人が欠かせない。
例えば、大阪万博の工事では人手不足が原因で工期の遅れが生じたことが報告されており、大規模な建設プロジェクトへの影響が懸念されている。
また、災害復旧の際にも施工能力不足が深刻な課題となっており、今後の大規模災害への備えが急務となっている。
4. 月給制導入の必要性と今後の展望
建設業界の人手不足を解消するためには、まず技能労働者に安定した給与を提供する「月給制」の導入が必要不可欠である。
一部の企業ではすでに月給制を導入し、技能労働者の処遇改善に取り組んでいるが、まだ業界全体に広がっているとは言い難い。
技能労働者が安定した収入を得られるようになれば、若者にとっても建設業が魅力的な職業選択肢となり、人手不足の解消につながるだろう。
また、労働条件の改善だけでなく、若い世代の技能労働者を育成するための取り組みも重要である。職人としてのスキルを学ぶ場を提供し、長期的に活躍できるキャリアパスを示すことで、建設業への参入を促進することが求められている。
さらに、政府や業界団体が一体となり、若手の技能労働者を支援する政策やプログラムを展開することも必要だ。
まとめ
建設業界が直面する人手不足の問題は、簡単に解消できるものではないが、給与形態や労働環境の改善がその鍵を握っている。技能労働者に安定した収入を提供し、若者にとって建設業が魅力的な職業となるような改革が必要である。月給制の導入や職人育成の体制強化により、業界全体で持続的な発展が期待できるだろう。
これからの日本において、インフラの維持や大規模な建設プロジェクトの遂行が求められる中で、建設業界は人材不足に対処し、未来を見据えた労働環境の整備を進めるべきである。それが、日本経済全体の安定と成長にも寄与するだろう。
参考記事(https://toyokeizai.net/articles/-/828645)
この記事を書いた人
建キャリNEXT シニアアドバイザー
梶井 龍一郎
大学を卒業後、企画営業に従事、転職し20年以上人材業界に携わる。
現在は建設業界の技術者をメインとしたキャリアサポートと人材教育を10年以上行っており、累計6,000人以上の転職支援をサポートしている。
東京都出身、二児の父。
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